東京地方裁判所 昭和58年(ワ)12827号 判決
一 差止請求について
その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と認められる乙第三五号証によれば、本件商標権(登録第一二三四八三九号)は、昭和五一年一一月一八日に設定登録され、昭和六一年一一月一八日に存続期間が満了し、昭和六二年四月二七日に右存続期間満了を原因とする本件商標権の登録の抹消登録が経由されたことが認められる。右認定の事実によれば、本件商標権は存在しないのであるから、原告の本件商標権に基づく差止請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
二 謝罪広告請求について
原告が、昭和五一年一一月一八日から昭和六一年一一月一八日までの間、本件商標権を有していたことは、前一の認定のとおりであり、また、被告が、昭和五七年一二月ころから、被告リユツクサツクを販売したことは、当事者間に争いがない。ところで、商標法三九条において準用する特許法一〇六条は、故意又は過失により商標権を侵害したことにより、商標権者の「業務上の信用を害した者に対しては」、裁判所は、商標権者の請求により、商標権者の「業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。」旨規定しているところ、原告は、第一に、原告のみが本件商標を使用したシユナードザツクを販売しうるとの信用を培つてきたのに対し、被告は、被告標章(一)又は被告標章(二)を付した被告リユツクサツクを販売したことにより、原告以外の者も本件商標を付したリユツクサツクを販売しうるとの誤解を登山用品の取扱業者にもたらした旨主張するが、たとい、原告の右主張事実が原告の業務上の信用を害する行為に当たるとしても、原告の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。また、原告は、第二に、被告は、登山用品店に対し、被告のみが本件商標の使用を認められていると述べて、被告リユツクサツクの売込みをした、第三に、被告リユツクサツクは、原告のシユナードザツクに比べ、品質、デザイン及び価格の面で劣つており、そのため原告のシユナードザツクのイメージが低落した旨主張するが、右主張事実を認めるに足りる証拠はない。してみれば、原告の謝罪広告請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないことに帰する。
三 以上のとおりであるから、原告の本訴請求は、いずれも棄却する。